初めて手に取った時は別に何の変哲もない冊子であり紙であり、本である。
漫画のようなレイアウト。
1ページ目を開いてみる。
ごくごく平凡な住宅の各部屋に存在するであろうクローゼット。
掃除が行き届いているのだろう。
しっかりと閉められたクローゼットの取手にピントを合わせシャッターを切ったかのような画が描いてある。
殺風景に思う。
続いてページをめくる。
驚いたことに、先程のページにあった画と全く同じタッチ、線画、ラインが掲載されている。
複製されているのだろう。
following. ページをめくり続ける。
変わらないクローゼットがそこにはあり続ける。
私の感じていた退屈はどこかに消え、徐々に薄気味悪さを覚えるようになった。
そもそもこの本はどこにあったのか?
自分の所有物である確証がないにも関わらず、居間にある小さな本棚に片付ける。
朝。珍しく目覚めの良い朝であった。
茶を汲む。
すると視界の端に普段見かけることのない冊子が映る。
気になった私は、その本を開いた。
何てことはない。
雑に開け放たれたクローゼットの画が、ただ続いているだけである。