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「避難灯ってあるだろ?ほら、体育館とか地下駐車場とかにある、緑色のピクトグラムが描かれた看板みたいなやつだよ」
「真っ白な扉の中にダッシュで入ろうとしてるじゃんか。それでまあ、動くわけないよな。だってそりゃ電光掲示板でもなければ本当に人が入ってるわけでもないし。」
「でもさ、赤坂の歯医者にある避難灯、それもまあごくごく普通の避難灯なんだけど、よく見てみると日によって微妙にポーズが違うんだよ。」
「月の初めの一週間は元の姿勢でじっとしてるんだ。二週目もじっとしてる。だけど三週目の月曜日からちょっとずつ扉の方へ向かって動いてるんだ。そこからどんどん扉との距離が短くなってくる。怖いだろ?」
「もう扉に入る寸前、って所まで行くとなぜか最初の位置に戻ってるんだ。」
「人間気にならない物はとことん気にならないもんで、その月末にはみんなが知ってるいつものダッシュポーズだ。」
「赤坂はもちろん、勤めてる人たちも気付かないみたいだし、そこに通う患者さんたちも全く気付いてない。」
教室に入った途端、唐突に久住の熱弁が始まった。
ここまで饒舌に喋る久住をかつて見た事が無かった私は驚いてしまった。
「朝からいきなり、何の話?」
「もう一回同じ話をする元気はないから要約するけど、」
「赤坂んとこの誘導灯が生きてんの」
「はぁ...、それで?」
「毎日ポーズが違ってる」
「あの姿勢は結構体幹使うからねぇ」
「それなのに病院の人間は全く気付いてない」
「ベテランピクトグラムくんだ。」
「おまえ、聞く気あんのか」
「ごめんごめん、それで?」
「お前がそこまで関心を持たないのも、よく分かる。」
「つまりは証拠がないからだ。」
「俺が『動いた』と思ってるのも、もしかしたら錯覚なのかもしれないし、眼振の症状なのかもしれない。」
「はぁ。」
「あの誘導灯を四六時中撮影し続ければ、ピクトグラムが本当に動いていることが証明できると思う。」
「うん。」
「そこで水谷。赤坂にお願いをしてほしい。」